2017/4/15〜16 鹿島槍ヶ岳 東尾根

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大学山岳同好会の後輩Tさん(通称"あきちゃん")と、部のコーチで尾根の向こうにもたびたび登場しているI先生こと"いとうちゃん"の2名を連れ、鹿島槍東尾根に行ってきました。


2週後に計画していた本番登山のプレ山行として、雪稜歩き中心で、ある程度長い行程のルートを選んだ結果、この人気ルートになりました。

私とペコマにとっても、白馬主稜などと並んで行ってみたかったルート、けどなんか二人で行くにはタイミング逃した感のあるルートだったのですが、みんなでわいわい楽しく登るスタイルかつ母校山岳同好会の活動に貢献出来るという付加価値もつくので2倍楽しい計画です。


金夜入りしてゲート手前で宴会後、日付が変わって1時前には就寝。翌朝4時起床して5時頃行動開始しました。
私たちの前に2パーティほど行っている雰囲気で、更に後続も居そうな感じでした。やっぱり大人気ルートですね!


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林道を歩き始めて早々、雪があらわれる。そしてカモシカがひょっこり顔を出しました。付かず離れず、こちらの様子を伺う愛らしい姿に夢中になっていたら


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東尾根の取り付きを通り過ぎました。林道がぐねぐね屈曲した直後のこの看板が目印。まあ、どこから登ってもいいのでしょうけれど。
よく見ると古びた赤布がありましたが、踏み跡は不明瞭で適当に登って行く感じです。ちなみに下山時通り過ぎたときには新品ぴかぴかのピンクテープが2つも追加されていて非常に分かり易くなっていましたよ。


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4月は来るGWに向け、毎週がっつり歩き系山行の予定です。最近またイノクマさんの有料サービスを利用しはじめました。今日の予報は昼前から雨か雪、そして雷。でも午前中は穏やかでいい天気でした。ブナ林の急登をひと登りすると、30分くらい前に先行したパーティに追いつきました。ラッセルを交代して先を行きます。


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いとうちゃんは面白い人です。大学時代は彼の講義を受けていましたが、何だか変わった感じの怖そうな人だなって思っていました。でも本当は違います。愉快な山屋さんです。古い山屋さんなので、登攀技術ははじめ見ていてヒヤヒヤすることも多かったですが、最近はとても安定感のある山屋さんになってきています。山男の歌とか色々知っていて、酔うと歌い始めます。


って、偉そうに書いてるけど、親しみを込めて書いています。入間のBase Campにも足繁く通ってフリーも頑張っています。ジムで「せいっ!」ていう珍しいかけ声が聞こえたら、たぶんいとうちゃんです。「ガンバ!」って言ってあげて下さい。


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と、順調に雪山ハイクを楽しんでいたら、予報通り雲行きが怪しくなって来てほどなくして雪も降り始めました。標高2000mちょいだけど、雨じゃなくてよかった・・!しかし風雪はどんどん強くなり、そして一ノ沢の頭を越える頃にはガスも濃くなりました。更に恐れていたことが・・・。雷さまのおでましです!!



しかしまさにナイフリッジの通過中、とりあえず進むしかありません。雷光と雷鳴の間隔がほとんど同時になってきて、低姿勢でじりじり進んでいたその時です。ちょうど二ノ沢の頭にたどり着いたころ、静電気のような気配を感じました。その直後にいとうちゃんのピッケルがぶーんとうなり、腕に電気を感じたようです。「くるぞ!」といとうちゃんが叫ぶやいなや、私の右足の親指の先から踵へと、すさまじい電撃が走りました。思わず短い悲鳴をあげてしまいます。


ペコマ「雷やばいね〜」
いとうちゃん「おちた、おちた」
あきちゃん「!」
ペコマ「いまどっか落ちましたね」
いとうちゃん「いや、いまここに落ちたの。ここに落ちた」
ちっぺ「私の右足流れた!」
いとうちゃん「ピッケルに感じたよ」
ペコマ「なにそれ、やば!!」


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とりあえず踵上げて三角形つくる、バランス崩してコケたら最悪な避雷姿勢、通称"雷しゃがみ"とかやってみるものの、さっさとどっかに避難もしたい。だってここはよりによって頭。だだっ広い尾根の真ん中です。

だましだましコルへ移動し、高いダケカンバに付かず離れずの位置に簡易雪洞を掘って雷宿り。予報では昼過ぎから天気回復とのことだったので、ここでしばし停滞して嵐が過ぎ去るのを待ち、天気回復してから行動再開、予定通り本日の目的地である第一岩峰の基部を目指す作戦としました。

この間に追い抜いた先行パーティが通り過ぎます。聞くと、彼らも第一岩峰基部に張る予定とのこと。この時点では2張もはるスペースがあるのか謎だったので、どうしようかと相談しながらうとうとします。

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しかし12時を回っても風雪は強まるばかり。後続パーティも合流し、彼らはここで幕営準備をはじめました。とりあえず雷雲は過ぎ去ったようなので、私たちは行動再開。先へ進むものの、ガスが濃くて尾根の端がどこなのか、傾斜がどのくらいなのかも判別不能。結局二ノ沢の頭の先にある小ピークを越えたコルで行動終了としました。


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狭い稜線上に雪を掘り下げてテント設営。快適なトイレも作りました。テントに潜り込むと、それだけであったかい!装備は何もかもびしょ濡れです。早速水作り&大乾かし大会。お湯アイロン大活躍!結局天気は悪化するばかりでした。停滞して正解!


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16時を過ぎたころ、わさわさと夕飯のお披露目がはじまります。そして各人持ち寄ったロービー、豚角煮、生姜焼き、ミートボールetc...。α米に一品プラスですごく美味しくなるのですが、これはもう豪華過ぎ!「軽量化」とか言ってたのにみんなやるな!(笑)

スナック菓子やつまみも豊富でたらふく食べました。


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夕方になると、やっと風雪が弱まって来てトイレに行く気力も沸いてきました。テントを出ると、なんと西に青空が見えている!雪庇の向こう、北の空には積雲の上に笠雲のような変わった雲が出ていました。


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爺ヶ岳方面。やっと嵐は過ぎ去ったようです。明日が楽しみだ!


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この日は18時には就寝して、翌朝2時半起床。乾燥パスタの朝食を済ませ、テント撤収して4時前に行動開始です。暗い中を歩いて行ったら、途中岩が出ているところでわざわざ強点をついちゃったりしてタイムロス。すっかり陽が昇りきった6時頃、第一岩峰に到着しました。しかし第一岩峰基部に幕営したはずの先行パーティ4名は今まさに取り付いたところで、ラインも被りそうだししばし順番待ち。後続のペアも追いついて来て渋滞発生です。


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第一岩峰上からフォローのあきちゃん、いとうちゃんを見下ろす。最高の天気、既にすばらしいパノラマが広がっています。今回は60mダブルロープ1本で、私かペコマがリードをしてロープ固定し、プルージックでFIXロープを登ってもらうスタイルにしました。


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第二岩峰では更にここまでノーロープできたっぽい5名パーティも合流しました。先頭で取り付いたのは、第一岩峰で合流したペア。2番手が4名パーティ、私たちは3番手です。最後に核心部があり、みんなここで苦労してました。お助け残置スリングがあるのでエイドもできます。


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ここを越えたらあとはひたすら雪稜登りと、雪壁トラバース。すでに雪が腐って来てますが滑ったら超気持ち良さそうなザラメです。北峰を素通りし、もうひとのぼり。さあ、山頂は後少しだ!


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あきちゃんは在学中、一番頑張っていた部員です。今はもうOGですが、看護師の仕事をしながら頑張って山を続けています。大学時代から一人で山歩きをはじめているのでキャリアも長く、少しずつステップアップしながら、一昨年の夏には彼女たっての希望で一緒に剣岳源次郎尾根も行きました。今回のプレ山行も、彼女が行きたいルートがあり、私たちが少なからずお手伝いをさせてもらっている感じ。メンタルも強くて弱音は一切吐きません。私たちとは根本から人間性が違う感じです。


ついに登頂!お疲れ様でした〜!!


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雪が安定していそうなら北俣本谷をさっさか降りたいところでしたが、昨日ある程度の降雪があったし今朝は激しい日射で午前中から雪が腐っているような状況。登っている最中も、そこかしこの沢筋で小規模な点発生がみられました。大人しく赤岩尾根を降りる事にして稜線を南下します。


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赤岩尾根にとりつくトラバースがやや緊張しましたが、それ以外はとくに悪い所はありませんでした。西沢の雪が比較的安定していそうだったので、早々に尾根を外れて大斜面を下降!尻セードの人生最長記録を更新したと思います。それはそれで楽しかったけど、シュプールを見るとちょっと焼きもちやいちゃったのは内緒です。

なんだかんだでゲート着は17時半。13時間半を越える行動時間となりました。おつかれさまでした〜!



さて、GWはペコマと剱に行く予定です。つぎの週末はその偵察。そして再来週もたぶんこの4人でどこか山に行くと思います。
雪稜は岩とは違った難しさがあり、私たちの弱点でもある気がします。
コンテかフリーソロでさっさか進むのは得意ですが、雪しかない斜面でしっかりした確保をした経験はきっと年数の割にかなり少ないです。
こういう機会に、基本的なアイゼンワークなども含め、もっと洗練できたらと思っています。
岩シーズンINまで、最後の雪山をがっつり楽しみますよ!
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2017年3月4〜5日 錫杖岳 前衛壁 クライミング

冬錫杖は今シーズンがはじめて!
前衛壁、先週は状態良しときいていたので楽しみにやってきました。


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壁がよく見える、錫杖沢出合少し手前の小高いところにテントを張って、初日は3ルンゼへ。


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すごすぎる晴天。暑いなあ・・。壁に太陽が燦々と降り注いでます。9時過ぎころ、ちっぺリードで登攀開始!


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正にちっぺこにぴったりのゆるふわ日和で雪も氷もグッサグサ!どんどん気温が上がり、ルンゼの中は融雪落氷がひっきりなし。

同時登攀も交えながら、たぶんトポで1、2Pとされているところをちっぺ、3、4Pをぺこま、5、6、7Pをちっぺリードでつるべで登りました。最後のチョックストーンハングは右側から越えましたが、スカスカ氷で足ブラになったりしてしびれました。


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でも何よりも感動したのは、コルについたときのこの景色!槍穂連峰が青空にくっきり。鳥肌が立ちました。登山の楽しみはやっぱこれだよねー!


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時間は12時すぎくらい。続くグラスホッパーは北東向きだからかこの高い気温の中でも安心感のある凍りっぷりでした。ひっそり佇んでる感が味があっていいですね。ちっぺがはじめの1Pを、ペコマが最後の1段を登って上部雪田へ。


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15時前くらいに登攀終了。グラスホッパーのラインを谷まで降りて、ちょっと気になってた氷を偵察したりしながら北アルプスの雄大な景色の中をてくてく帰りました。


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翌日は1ルンゼ。3ルンゼより更に日当りがいいので早起きして暗いうちから登攀開始しました。


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でも昨日一日でかなりやられちゃったのでしょう。1P目から氷はスカスカでブランクセクションはしびれるドラツーでした。リードのペコマは珍しく相当吠えまくりながら、「落ちるよ!」って何度も言いつつ何とか落ちずに登りきりました。
フォローで登りましたが面白かったです。ただ、氷のセクションはもはや時間の問題って感じでした。


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陽が登ると同時に気温は急上昇。激しい落雪が凶器の様に降ってきます。上部氷柱も強い日差しをうけてどんどん溶けてます。急に崩落でもしたら最悪なので1P目で降りました。



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降りてから、まだ朝8時とかだったのですぐ隣の左方カンテに行ってみました。

P3050102.jpg岩をやる予定はなかったので岩ギアをかなり間引いてきたのが気がかりでしたが1、2P目を楽しく登って終了。こちらも3P目より上は色んな物が降って来るので大人しく降りました。
3月はじめでここまでとは思わなかったです。他パーティもみなさん舌を巻いておられました。

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最後に見た前衛壁は1日前の朝見たのと比べてかなり黒くなっていた気がしました。
冬錫杖に来たつもりだったけど、もう春だー!
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はじめての高所登山〜考察を交えて

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未だ経験したことのなかった高所登山。
本当はいつも通り自分たちの力だけでやりたいが、高所登山となるとそうもいっていられない。6000mでも最低20日の程度の休みが必要だし、日数が短い程成功確立も低くなる。



国際山岳認定医として高所登山についても当然課目がある。高所生理学に関する論文もいくつか読んでいる。しかし、実際に高所を経験したこともないのに何を語れるのか?それにいつか8000mを登る為にはまず6000mを経験する必要がある。私たちは最初、なりふり構わず公募隊での高所登山を考えた。



色々調べてみると、南米エクアドルに世界一短い日数で登れる6000m峰があるらしい。
公募隊を調べるとだいたい12日間で日程が組まれている。これなら通常1週間+前後の土日しか長期休暇を貰えない自分たちにも、かなり現実的な数字である。
よし、善は急げだ。チンボラソに登ろう。なるべく早く決行しよう、そんな風に思っていた矢先。
ラッキーにもGWに合わせてなんとか11日間の休暇をとることに成功した。職場の理解と、それから普段からの真面目な勤務態度の賜物だと自負したい。
何はともあれ、やっと未知の世界だった高所を経験するというファーストステップを踏み出せることになった。



しかし、改めてチンボラソの公募隊の日程表を見てみる。ヒマラヤのようなキャラバンを必要とする登山ではないし、上部キャンプも設営しない。この内容なら自分たちだけで可能なのではないか。見れば見るほど、他のクライアントと一緒に管理されながら行動して悶々とした日々を送る自分たちの姿が想像出来る。やっぱりこういうのは違う。私たちの今までのスタイルと余りにかけ離れている。金額もかなりのものだ。考え直して、公募隊を利用するのはやめた。



その後、チンボラソが国立公園でガイド登山を基本としている事や、軍の関係などで地形図が手に入らないこと、治安と車での移動の件などでまた考え直さねばならなくなる。最終的に、現地ツアーを利用してチンボラソに登ったばかりだという方と知人の結婚式で偶然知り合い、同じ現地ツアーを利用する事にした。



現地ツアーにお願いしたのは、空港−ホテル間の送迎、宿の確保、登山ガイドの確保だ。予算や日数から計画が組まれ、私たちは以下のような予定でチンボラソを目指す事となった。



1日目(深夜):Quito(エクアドルの首都)着 (2800m泊)
2日目:Quitoでフリー            (2800m泊)
3日目:Quitoでフリー            (2800m泊)
4日目:順応登山1 パソチョア(4199m)登頂 (3200m泊)
5日目:順応登山2 北イリニサ(5116m)登頂 (3200m泊)
6日目:休養日                (3200m泊)
7日目:チンボラソベース小屋入り        (4800m泊)
8日目:チンボラソ(6267m)登頂       (2800m泊)
9〜11日目:帰国



ここで、高所登山のセオリーを考えてみる。



1.Climb high, Sleep low

宿泊高度を一気に500m以上上げない。やむを得ない場合はいきなり宿泊せずに2〜3回登降を繰り返してから宿泊、それも出来ない場合は宿泊地より100〜200m高いところまで登ってから、降りて泊まる。

2.高所衰退

人は高所に順応出来る反面、そこに滞在することによって生体機能が低下する。この生体機能の低下を高所衰退という。一般に高度5500m以上では高所衰退の進行速度が高所順応のそれを上回ると言われている。このため、5500mに順応したら一気に頂上を目指すか、一旦低い所におりて休養する必要がある。



また今回、私たちは実験的にSpO2(動脈血酸素飽和度)計測装置(以下Satモニター)を持って行き色々な高度や状況で計測してみました。全体を通してペコマがやや低め、またそれを反映するかのように高度障害も出ていました。

※SpO2の正常値:95%以上。平地で90%をきるようだとやばい。



ここで、一応概念として言われている高山病の定義を示します。



急性高山病(Acute Mountain Sickness:AMS)とは・・

低酸素環境に晒されて6〜9時間たつと誰でも発症する。症状は、

頭痛が必ず起こり、それに加え以下のうち2〜3項目が見られればAMSと診断出来る。

・食欲低下、吐き気、嘔吐(消化器系の症状)

・疲労、倦怠感

・不眠

・動悸

・軽い労作時の息切れ

・手足、顔のむくみ


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今回、私に限って言うと、まず出国1週間前に富士山の2800m地点で1泊し、SpO2:95以上、つまり順応していました。ただこの効果がどのくらい維持されるのかは個人差もあり分かっていません。Quitoに到着後、初日、二日目はホテルの階段を上がると平地では感じないような息切れがありましたがAMSの症状はとくに出ませんでした。



順応登山でも、ガイドについて普段ではありえないくらいゆっくり歩いたこと、また呼吸に意識したこともあり何も起きませんでした。
SpO2という観点からも見てみると、2つめの順応登山の山頂5116m地点で数値は87%程度。この数字をどう捉えるかは色々だと思いますが、私が思うに問題無い、なかなかの数値だと思います。少なくとも重篤なAMSを引き起こす値ではない。
ちなみに、医療関係者だったら一度はSatモニターつけて息止め遊びとかやったことあるかと思いますが、90%以下まで我慢できない方が多いと思います。でも高所では低酸素にはなるけれど二酸化炭素(苦しいと感じる原因)濃度が上がらないため、本当に気付かないうちにSpO2が下がります。つまり高所では低酸素症が気付かないうちに進行するのです。



ここで、上に書いた事を踏まえ補足説明です。低酸素状態を回避するために通常身体は様々な反応(応答)をします。その一つが換気応答。2500mを越えると無意識にはじまりますが、ある程度の高度を越えたら意識的にもやらないと追いつきません。SpO2を上げる換気法は実地で練習したり低酸素室で訓練したりして習得しますが、コツは換気量を上げる(やりすぎると過呼吸になる)こととPEEP(呼気終末陽圧)をかけること。具体的には1回に吸う空気の量を多くし、吐く時に口をすぼめて圧をかけます。
ただ、眠ってしまうとこの意識的な呼吸が出来ない。そのため"宿泊"というのがキーワードになり、寝る高度を一気に上げるとAMSになりやすいとされているのです。



さて。結論からいうと、チンボラソではAMSの症状が出ました。具体的にどんなだったか振り返ってみます。


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まず、4800mの高度の宿泊地となったカレル小屋。

ここでは前々日に5100m程度まで登っているとはいえ、宿泊地の高度はいきなり1600mも上がっています。症状は出ませんでしたが、やっぱり酸素の薄さは感じ、呼吸には気をつけました。また、夕方18時に寝て22時に起床だったのですがその4時間のうちほとんど寝付けず、結局合計で2時間も寝ていないのではないでしょうか。かえってそのせいで換気が落ちず、SpO2が保たれた可能性があります。



そして登山中。
ゆっくり歩いたこともあり、症状は出ませんでした。ただ、今思うと寝不足のせいだと思いますが、5500m付近から、歩きながら寝ていた気がします。うつらうつらとしていた時はやはり換気が落ちていた自覚もありました。しかし、山中ではその"うつらうつら"が低酸素症のせいなんじゃないかと不安になってしまいました。
そして不思議なことに、人が順応できず長居は無用とされる5500m overの世界に突入しても、全く息苦しさ、空気の薄さを感じませんでした。途中うつらうつらして換気が落ちているのに、です。これには更に不安を感じました。これこそ、本当はSpO2が下がっているのにそれを感知できない、低酸素脳症の症状なのではないか?と。そこで、意識的に換気量を多くしはじめました。



実際、私たちは順応登山で5166mまでしか行っていません。5500mには順応していないのです。現にペコマは登山中に頭痛や息苦しさといったAMSの症状が出現しています。



そして山頂直下。雪の状態が悪くなり、膝下ラッセルが続きました。ガイドがトップを行ってくれましたが、2人目、3人目もずぶずぶ埋まるような雪質でした。私はここで遅々として進まない状況に耐えられず少しペースを上げてしまいます。それに伴い、まだ息苦しくないことに不安が強くなりさらに換気量を多くしました。



その結果、山頂まであと20分程というところで急に喉がきゅっとしまり息が吸えなくなりました。声も出ません。そして今にもブラックアウトしそうです。雪が柔らかいとはいえ、数百メートルにわたって延々40度ほどの傾斜の雪渓が続いています。今ここで意識を失ったらどうなるかな、と本気で考えました。これ以上進まない方がいいのでは・・とまで。



結局これも、今思えば低酸素症というよりは過換気にしすぎたせいだったのだと思います。もしかしたら空気の薄さを感じなかったのは異常ではなく、本当にそこまで低酸素になっていなかっただけかも知れません。ガイドのホセに励まされ、とにかく呼吸を整え、チョコを食べ、むせないよう少しずつ水を飲み、ちょっと休憩したら歩ける様になりました。ただ、ここから先は本当にゆっくりゆっくり雪を踏み固め、進みました。



山頂6267mでのSpO2はなんと98%!自分がいかに過換気にしすぎていたか実感しました。びびりすぎでしたが、経験が浅い故仕方なかったかなとも思います。


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結局頭痛は下山中、5700m位から出始めたと思います。過換気によるアルカローシスのせいもあってか、吐き気もひどかったです。AMSは症候群であり、単に低酸素症だけで起こるものではありません。低酸素症と表裏一体の過換気、脱水、疲労やエネルギー不足等様々な要因が複雑に絡み合って発症するものです。そして必発である頭痛の原因もはっきりとは分かっていません。私の下山中に起きた症状も、ほぼ8割方AMSでよいと思いますが断定はできません。


結局登山日は23時ころ歩き始め、翌午前8時頃登頂、11時過ぎに小屋着と、標高差1467mの行動時間12時間でした。帰りの車のなかで4時間弱泥の様に眠ったら夕方には肉を喰えるまでに回復しました。



ここで、某公募隊の日程と私たちの日程をグラフにして比較してみます。



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青が某公募隊、赤が私たちの今回の日程です。青に比べると、赤の順応計画がお粗末なことが一目で分かります。

例えば、はじめの2日Quitoに滞在したあと青では4800mまで高度を上げてから3800mに宿泊。その後4800mに宿泊してコトパクシ(5987m)に登り、Quitoと同じくらいの高度まで下がってしっかり休養しています。これに対し赤では、Quitoに3日滞在したあと2度の順応登山では5100mまでしか高度を上げられておらず、更に宿泊地の高度は3200mまでしか下げていません。また、順応といっても1度行けば完了できるわけではないのです。青では2度5000m overを経験しているのに対し赤では1度、しかも5000mちょいまでしか行けていません。更に今回は5000mのウィンパー小屋が改装中であり、それより200m下の小屋がベースとなったので、アタック日の高低差、行動時間が長くなってしまいました。

(ちなみに横軸11のところ、青でウィンパー小屋上部まで往復しているところで赤も少し上昇しているのは、本来休養日だった日に乗馬をやって3700m程度まで上がったためです。乗馬も思いがけずガチになってしまいチンボラソアタック日まで筋肉痛を残してしまいました)




というわけで、色々反省点は多かった今回の登山ですが、結果オーライ、次につながるいい旅となりました。また、きちんと順応すればより高所へ行く事や、高所でより困難なクライミングをすることなどは問題無く出来るのではないか、と感じました。また、人より体力があれば、順応期間中の休養日などを減らせる可能性もあり、人によっては日程を短くする事も可能なのではないかと思いました。標高差が1400mといっても、それが標高1000mから2400mまでの登山なら何ともないはず。つまりきちんと順応出来るかに全てがかかっているわけですよね。自分はとくべつ高所に強いとも思いませんが、弱いこともなさそうだな、と、少し自信がついた8日間でもありました。



それにしてもエクアドルはとても良いところでした。人も親切でご飯も美味しいし、山も沢山あって綺麗なところでした。山友達もできたし近いうちにリピートしそうな予感がします。また、登山からは話が逸れるのですが、生のスペイン語に触れスペイン語も好きになりました。英語以外で「話せる様になりたい!」と積極的に思ったのはスペイン語がはじめてかもしれません。エクアドルのみならず南米はまた必ず行くと思うので、英語と平行してスペイン語も頑張ってみようかなと思う今日この頃でした。


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総じて本当に収穫の多い良い旅になりました。これを糧にまた一歩前へ進みます!
           

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青鬼氷祭!

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この滝をのぼった。
正確に言うと、のぼらせてもらった。


昨年からわたしが所属する山岳同人「青鬼」で盛り上がっていたある滝の初登攀計画。
会の代表がまずその滝の情報を得て、目を付けた。しかも立派な滝なのに未だ登られていないかもという可能性が浮上し、以降会のメンバーがどんどん情報収集していって滝の詳細な場所まで特定した。
そしてついに今シーズン、アタックをかけることが決まった。


さるバレンタインデー、その計画のもとに集まった青鬼メンバーが滝のたもとに到達した。
そうして目の前の巨大な氷瀑にとりついた。私もその一員として、登攀に参加することができた。


青鬼に入ったのは数年前。
Rickyとペコマと3人で仲間内だけで山をやってきた私たちは、大学を卒業した後山岳会に入るかどうか悩んだ時期もあった。
最終的に出会ったのが、常に高いモチベーションで山と向き合い、山に飢えている若者の集団、青鬼。私たちがまさに求めていた感じだった。私たちに必要なのは、高い技術を与えてくれる人や難しい山に連れて行ってくれる人ではなく、ともに高め合えるライバルだったから。


みんな変態なので向いている方向もばらばらに見えるが、実はわりと同じような価値観のもとに山に登っている。
今回の氷祭りでその実感はより深まった。
青鬼に入って本当に良かったな、と改めて思った。


今年は仕事が忙しいのを理由に、山に入る気は全くと言っていいほどなかった。今年はフリークライミングに全霊を注ぎ込むと決めていた。それが、この氷祭りの日程が決まり、たまたま予定があいていた週末だったので行くしか無いとなり、そうなればアイスクライミングも練習しなければ・・という流れから、かなり予定外に今冬シーズンがスタートした。
正直、この氷瀑を実際にこの目で見るまでは、今回の氷祭りも宴会メインくらいの気持ちだった。


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今は、いつものあの状態になっている。
なぜだかすごく切なくて、胸がしめつけられるようで、甘酸っぱくて、ぼーっとする。
自分にとって快心の山をやったあとにくる反動だ。
感覚としては、恋心とか恋愛感情とかとほとんど同じだと思う。
山の楽しみ方は本当に限りなく無限大だけど、私はやっぱりアルパインクライミングが好きなんだろうな。


今回の自分の登攀としては、内容はすごく悔いの残るものになった。
でもそれ以上に、メンタル的な面、経験値的な面、そして青鬼メンバーとより結束を強めるという面でとても得るものが多かった。
自然を相手にするクライミングは本当に面白い。
そして、青鬼みんなの功労によってなし得たこの登攀は、先人のトレースをたどるより困難な登攀の何十倍も価値あるものだ。


この滝の登攀については、尾根のむこうに詳しく書きます。
これからもこんなしびれるクライミングを青鬼たちとたくさんやりたいな!

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氷登り初め。

スキー旅行も終わり、今週末からは城ヶ崎でフリーの予定だった。

そもそもいまは仕事が忙しくて長い休みがとれないので、それだったら思い切って冬も山に行かず、フリーに専念する1年にしちゃおう。そう思って前々から決めていたことだった。

だけど急にはじまったスキー通い。スキーが楽しい。
ようつべで虎の穴、ウェブザベしてみる。うーん。どうも、自分が城ヶ崎できゃっきゃうふふしてる絵が浮かんでこない・・。

そうこうしてたら、日程的に行けないと思ってた青鬼氷祭りに行けそうになってきた。青鬼の鬼たちはせっせと山に登ってる。

これはもう・・フリーじゃないでしょ!

というわけで、今年も今まで通りの冬シーズンが到来しました。
青鬼氷祭りに備え、まず前から行きたいなと思ってた昇天の氷柱に行く事にした。


前日は苗場スキー場でスキーレッスン。
沢山の人でにぎわうスキー場で滑っていると、明日は久しぶりのアイスだなんて本当かな?といった気分。
がっつり滑って腹ぺこで帰宅し、飲み食いしたら動けなくなった。
でもギア準備しなきゃ明日登りに行けない・・と、重い腹を持ち上げて山道具部屋へ。スクリューをひっぱりだし、アイゼンとアックスを探し出したら、先が丸すぎてやばい。ドライのせいかコブラのさきっちょは変な鍵型みたいになっちゃっている。
もう横になりたいという欲求を抑えて23時過ぎから研ぎ研ぎ・・・。


そんな感じでアプローチを開始するまで半信半疑だったけど、久しぶりのアイスはやっぱり楽しかった。

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はじめての荒船山。


この日は先行パーティが居たので、落氷待ちをしつつゆっくり登った。
でも風はほとんどなくて気温も高く、厳しい北壁のイメージはなし。待ち時間もまったり過ごせた。
更に結氷状態もよかった。

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4P目。毎年同じ形に凍るなんて面白いね!


奇数Pをちっぺ、偶数Pをペコマでつるべ。いざ登り始めてみると、そんなに感覚は鈍っていなかった。
滝の形が変化に富んでいて、単調なクライミングでなく楽しい。傾斜もお手頃。シーズンはじめにはちょうど良かったと思う。
何と言っても天気に恵まれた。
バックには見事な浅間山がどーん。


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終了点。


登山道に合流後ちょっとだけ登って、柵の無い展望台からの素晴らしい眺めに満足して、100名山じゃない荒船山の山頂へは行かず下山。


今はベースキャンプという最高級のジムで登れるので、フリーはジムで頑張る、それで十分欲求も満たされている。外岩はもしかしたら春先から行くかな・・いや、春先はスキーかな・・。


本当は5.13という数字にこだわるクライミングもやりたいなって気持ちがあったけど、そんなものにこだわらなくても着実に強くなってるって自信もある。それよりも山に行く方がやっぱり大事だ。通って限界グレードを追い求めるのにも憧れはするし、それで確かに成長する部分もあるとは思うけど、時間は慢性的に不足してるし、やっぱり私が一番やりたいことはちょっと違うのかな。外岩は何かのタイミングでぽっと行けたら、ワンデイで登れるルートを確実に登る、そんな今まで通りのスタイルでそのうち5.13が登れればいいか。
パートナーの心はボルトを追いかけるリードクライミングからすっかり離れちゃったしね・・。


来週からも青鬼氷祭りに向けてアックスふったろ〜!


Tag:アルパインクライミング  Trackback:0 comment:0 

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chippe

Author:chippe
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2006.10 山歩きをはじめる。
2007.9 クライミングをはじめる。
山岳同人「青鬼」所属のゆるふわクライマー。

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