本場で研修してきた。

西洋文化に追いつくべく、明治新政府が推進した「文明開化」の象徴といえば、牛肉食の解禁。

明治5年1月24日には時の天皇も牛肉を食し、仮名垣魯文の安愚楽鍋にもあるように牛鍋がたいそうもてはやされた。

あぐらなべ
「牛鍋食わぬは開化不進奴」


だが、当時の牛鍋は牛のぶつ切り肉の味噌煮込みだった。これを現在のすき焼き肉のような薄切り肉として砂糖と醤油で味付けし、"すき焼き"の原型を作ったと言われているのが、三重県松阪市にある明治11年創業の「和田金」初代店主なのだ。


つまり日本人のソウルフード"すき焼き"の元祖が「和田金」ということになる。

肉好きの私はすき焼きも幼少時代から大好物で、思い返せば誕生日ディナーが必ずすき焼きだったほどである。

私たちは部活動に勤しむ中でこの「和田金」というお店の存在を知り、数年前からずっと訪問する機会をうかがっていた。
そしてついに今回、思い切って和牛の本場である松阪に乗り込み、「和田金」で部活を決行することにしたのである。


しかし、割と辺鄙なところにある松阪。そう滅多に行ける場所ではない。今回は部活動だし、歴史ある松阪と松阪牛を堪能し尽くすべく"欲張り2本立て"プランを計画した。
初日に「和田金」、そして二日目に「牛銀」である。
「牛銀」も明治35年創業の老舗で超有名な松阪牛専門店だ。今回は元祖「和田金」ですき焼きを、「牛銀」ではこのお店オリジナルの食べ方である"汐ちり"を頂くことにした。


初日は名張で登り、まだまだ登りたいのに後ろ髪引かれながら(部活って辛い!)15時に岩場を出発。
ホテルでちゃんとした服に着替えて出陣した。部活開始!

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今回は寿き焼の松コースと網焼き厳選ランプコースというお店の最高ランクを堪能する。老舗旅館に泊まりに来たかと錯覚するような8畳ほどの立派な和室に通された。ここで仲居さんに全てを委ね、ゆったりとお食事をいただくわけである。

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肉に集中するため、ビールだと飲み過ぎそうなのでシャンパンで乾杯。
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冷製、肉吸い、前菜3種と楽しんでいると、卓上の囲炉裏に赤々と焼けた炭が積み上げられた。
2mくらい離れたところからも熱を感じるほど強力な遠赤外線を放つ良質な炭。
火箸で炭をひとつひとつ丁寧に移していくその手付きに見とれてしまう。

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そして早速メインが登場。

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松阪牛ランプ肉。
和田金は和田金ファームという自家農場で育った牛さんのみを使っているので、このお肉はまさにここでしか味わえない。
結構な大きさがあって1枚100g以上はあるように見える。松阪牛をこのボリュームで、というのは都内の高級店でも余り見られない贅沢な光景で、本場ならでは。
もちろんレアでお願いする。

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たまり醤油にしっかりとつけて焼くのが和田金流。


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網にのせる前から溶け出していた融点の低い脂がたちまち溢れ出してうるうるに。


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部屋中が甘い"和牛香"に包まれ、仲居さんとの会話も弾む。老舗で松阪牛を守り続ける彼女たちの話す言葉には重みと趣があり心に響くものがある。


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都内の鉄板焼きなどでよくあるパターンだと、焼いた塊肉はこの後一口大にカットしてからサーブされる。しかし仲居さんは焼けたお肉をそのままお皿にポンとのせ、「お箸で切れるのでそのままどうぞ」と宣った!

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もちろん、まずはそのままかぶりつく。するとほとんど噛まないうちに切れてしまった。肉の繊維が柔らか過ぎてほどけてしまう。
脂も肉の味も非常に上品な上、すぐに消えてしまうのでしっかりと味わう必要がある。
明らかに都内で「松阪牛」として出回っているお肉とは質が違う。


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そろそろワインを追加して・・・


お次はついにすき焼きの登場!
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見よ、この美しすぎるサシ!!


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牛脂をひいたお鍋にまず肉のみが投入され、たまり醤油と砂糖で甘く味付けしていく。


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たちまちくつくつと踊るお肉。そしてお肉の色が変わってきた。たまらない和牛香!!鼻腔を拡げて吸い込みまくる。


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良い加減で仲居さんがお肉を引き上げ、「どうぞ」と穏やかに器へ投入。


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これに卵にたっぷりとからめていただくわけです!


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これが本場のすき焼きだー!


お肉にかぶりつくや否や、とろけ出す牛脂。写真だけ見ているといかにもこってりとした感じを想像されるだろうが、和田金さん選りすぐりの松阪牛は、ひと噛みふた噛みでさらりと消えてしまい、全くあとに残らない。最初の一瞬こそそのジューシーさを味わえるものの、それは刹那。あとに残るのはただただ肉の旨味だけ・・。
こってり肉はちょっと苦手、高級なお肉は脂がすご過ぎて辛い、と思っている方にはぜひ"本物"を味わってみていただきたい!


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お肉が終わったお鍋に、続いてお野菜投入。お肉の旨みがたっぷり染み込んで野菜もより一層美味しくなる。またスープは、白だしベースのシンプルな味付けで、肉の旨味と野菜から出た水で非常に優しいお味になっている。


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すっかり胸いっぱいになったところで、網を利用して焼き餅が供された。お肉の香りから一転、香ばしい匂いに顔がほころぶ。


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すき焼きを食べて残った卵は旨味の塊なので、お米をもらってTKGにした。この時点で大食いの私たちも腹5分目を超えてきた。


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しかし最後に、オプションで頼んだ"肉ひつまぶし"が登場。なんとも贅沢な部活動!


初めはそのままで、お次に薬味を入れて味を変え、
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最後はお茶漬けにしていただく。
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味もサービスも大満足。"美味しい食事"とは、やはり"楽しいひと時"なのだと実感した。"松阪牛を楽しむ"場をトータルコーディネートしてくれるという超一流のサービスを体験できた。そこに本場ならではの趣、歴史が感じられて、より一層、いつもの部活にはない奥深さがあった。はるばる松阪まできて、本当に良かった。


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翌日は朝ランでカロリー消費したあと、日帰り温泉で部活着(ジャージではない)に換装。午前11時、牛銀本店へ乗り込んだ。

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お昼の開店前からお店の前には人だかりが。牛銀本店の横には「洋食屋牛銀」という別の店舗もあって、順番待ちのお客さんで賑わっていた。ちなみにお店の初代が「銀蔵さん」という名前だったから「牛銀」なのだそうだ。


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豪華絢爛な和田金とは違って、非常に歴史を感じる木造建築。靴を脱いで上がり、仲居さんについて2階一番奥の4畳半の個室へ通される。廊下がぎしぎしいう感じが非常に昭和っぽい。否、明治なのだが。


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今回も、このお店の最高ランクをということで汐ちりの「寿」コースを予約していた。「本日は"寿のお肉"をご用意できますので」、と仲居さん。予約していたとしても"寿のお肉"は常にあるわけではないようだ。


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というわけで、個体識別番号付きの正真正銘、「特産」松阪牛で汐ちりがスタート。

※部活めも:「特産松阪牛」とは・・
松阪牛の中でも、兵庫県但馬・淡路産の子牛を定められた方法で900日以上肥育するなど、厳しい条件を全てクリアした松阪牛のトップブランド。A5やA4などと言った日本食肉格付け協会の等級表示はない。通常より10ヶ月も長く肥育する必要があるためリスクとコストが大きく、熟練の肥育農家でしか育てることができない。松阪牛全体の約4%しか存在せず、「生きたまま熟成」させるという意味から"究極のエイジングビーフ"と言われている。
(重要。テストに出ます)

汐ちりは牛銀オリジナルのメニュー。
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和田金がたまり醤油なのに対し、汐ちりは白しょうゆと昆布だし、こしょうでシンプルに味付けする。

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味付けがシンプルなので肉の旨味がダイレクトに味わえる。
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汐ちりが気に入って、これ目当てで来るリピーターも多いのだとか。塩気とこしょうのアクセントも相まって、より肉肉しさが強調されている。

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焼肉に近い食べ方と言ったらわかりやすいだろうか。個人的にはすき焼きよりもこちらの方が肉を食べている感が強くて好きだ。

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この絶品肉がもう1枚ずつ頂けて、合間に旨味をたっぷり吸ったお野菜で癒される。ご飯とお味噌汁はおかわり自由だ。

お肉の提供が終わり、一旦お部屋は私たちだけになる。
「はあー、幸せだね」と座椅子にもたれかかって放心する私たち。

スープも完飲し、最後に鍋に残った透き通る牛脂を眺めながら
「牛脂までなくなってたら仲居さん驚くかな」、とペコマ。
ペコマは常人離れした食い意地の持ち主なので、以前牛脂を食べて嘔吐した経験もある。戻ってきた仲居さんにそんな冗談話をしたところ、
「あら、これは食べられるんですよ、是非!」
と言って仲居さん、真顔で私たちに牛脂を勧めてき賜うた(笑)。

逆に度肝を抜かれつつ、口に入れてみると、えっ!!?
牛脂はほんの刹那に跡形もなく消えて言った。
なんと儚い。言葉もなかった。驚愕体験だった。

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「個体識別番号とともに」


現在、和牛の価格は高騰しているという。

それは和牛の生育が難しくコストがかかるなどの理由や生産者の高齢化などで農家が減少し、子牛の数が減っているからだそうだ。
和牛を育てるということはまさに職人技なのである。
そして国内の子牛、ひいては和牛の価格高騰により国内市場が縮小し、さらに価格が上がるという悪循環が起こっている。一部には市場を海外に拡大するという動きも出てきており、貴重な和牛の入手が今後さらに困難になる可能性もある。

松阪牛全体における特産松阪牛の比率も年々減少しているそうで、「特産」は高すぎて本場以外ではほぼ出回っていないそうだ。
昨年、「ふるさと納税」で松阪市に寄付をし、返礼品で松阪牛をいただいたのだが、正直脂っこくて、私とペコマが胃もたれして箸が止まるほどだった。今回食べたとろける松阪牛とは明らかに別物だったと思う。

和牛は日本が誇る芸術品であり、私たち日本人が守るべき財産だと思う。
肉好きの私はそう思う。
今回、部活動で本場を訪れてその気持ちがさらに強くなった。
いい部活ができて本当に良かった。松阪さん、ありがとう!


というわけで、部活史上最高にハイコストな二日間だったが、一応名目は「入籍7年記念旅行」ということで免責なのだ。
結論:もっともっと和牛を食べよう!


最後に。
牛銀の仲居さんの自信に満ちた名言

「本当にいい牛からとれる牛脂しか食べられないんです」

遠いけどリピ必至だ!
テーマ : 肉料理
ジャンル : グルメ

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シーズン終わりのまとめ。

今更ですが、GWは剱尾根R4に行ってました。

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今年のGW、R4は氷結が甘かったみたいですね。

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登攀を諦めたパーティもいくつかあったようだと聞きました。

今シーズン、アイス上達がひとつの目標でした。昨年11月終わりから八ヶ岳通いをはじめ、年末年始はカナディアンロッキーで登り込み、帰国後も象の鼻やブラベや、日光月山雄滝などの、少なくとも今までの自分だったらリードできなかったようなところでも自信を持って登れる様になり、3月4月は少しだけ山にも入って、迎えたこのGWでした。

夜が開けてやっとR4が「これだ」と確認出来た時、確かにずいぶん黒いなとは思ったものの、ラインをみる"心の眼"(なんかやばそうでも行ってみると割とだいじょぶっていうアレ)が養われていたからか「うん、いけるっしょ」と思えたのは良かったです。

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最後の雪壁もまっさらで、腐り放題腐った雪を一歩一歩ラッセルして上がりました。誰かのあとをついて登ってる感は幸福な事になく、登攀自体はとても楽しめました。

"継続"と表現していいのか、ベースを張らず全装備を持っての一筆書き24時間タイムトライアルを計画していただけに、R4のみとなってしまった今回の結果はやはり残念でした。

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パートナーとは下山後いろいろ話し合いました。山登りに対する価値観の違い、姿勢の違いが根底にあって、それは以前からあったものですが、今までは上手い具合に作用し合って上向きのベクトルを生み出していたその"違い"が、今回は足を引っ張る結果になった、とそんな気がしています。


ペコマはこの登山を、安全に登って的確な判断をし、無事降りてきたから「成功」だと考えており、対して私はやれるべきことを全てやったとは言えないから「失敗」だったと考えています。
やれるべきことを全部やったら事故ったかも知れないけど、やれるべきことを全部やらない登山はやる価値がない。
そこを、どこに線を引いてどう感じるか、もうこれは価値観という便利な言葉で表現するしかないでしょう。

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ひとりひとりの実力や経験値はいうまでもなく、意志や目標の統一という要素もパーティとしての強さを決定づける上で非常に重要です。今回はそれを痛感しました。と同時に、私はもっと上に行ける気がしているので、まだまだ楽しい登山を追求して行きたいと改めて思いました。


天才的な発想力もなければ、飛躍的な成長もなかなかないですが、こうやって滑稽にもがきながら、ワイドクラックよろしくずりずり這い上がって行くのが私の山のようです。ワイドがそんなに好きな訳ではないですが。でも少しずつでも良いから高度を上げて、いつまでも上へ上へと登って行きたい。そんな風に思います。



さて、GWあけたらフリーに専念しよう!と決めていました。
随分と重くなった身体を、歩くだけでなく岩も登れる身体に、アックスだけでなくスローパーや外傾カチも握れる身体に目下改造中です。
夏には海外での避暑クライミングも計画中。
テンション鰻は続きます!
テーマ : 登山
ジャンル : スポーツ

Tag:日々・つぶやき  Trackback:0 comment:0 

プロフィール

chippe

Author:chippe
chippeのブログへようこそ!
2006.10 山歩きをはじめる。
2007.9 クライミングをはじめる。
山岳同人「青鬼」所属のゆるふわクライマー。

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